
【式辞】 二月下旬までの寒波で、校舎回りも真っ白に染められ自然の厳しさを感じた冬から、感謝のフラワーロードのチューリップも躍動する、暖かな春の訪れが待ち遠しく感じられる日々となりました。 この佳き日に、糸魚川市教育委員様、糸魚川市議会議員の皆様、能生中学校後援会長様 能生中PTA会長様をはじめ、多くのご来賓のご臨席のもと、第三十三回卒業証書授与式が挙行できますことを心から感謝し、厚く御礼申し上げます。 保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。お子様の立派に成長された姿を前にして、大きな喜びを感じられていることと思います。また、これまで、当校の教育活動にご理解とご協力を賜りましたことに厚く感謝申し上げます。 卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。 皆さんの門出の日を飾る会場の花たちは、今まで代々受け継がれてきた能生中が目指すSDGsの象徴でもある花々です。文化活動部の皆さんが、春先に咲き終わった花の片づけから始まり、肥料や土入れをして管理し、お世話になった先輩方に感謝を伝えるために教室内に移して、水やりをしてくれた花々です。今、鮮やかな花を咲かせるまでに多くの思いと手をかけてきたのです。ステージを飾る桜は、皆さんの教室から見えた冬の厳しい寒さに蕾をかたくしていた、あの桜です。管理員さんが準備してくださり、先生方が休日や早朝から温度管理に気を配り世話をしてきました。今年は例年になく天候が不順で、自然にあらがいながらも、ようやく花を咲かせ始めました。人生の大きな岐路に向かう卒業生の皆さんの前途を祝う花々が、皆さんを愛する仲間たちの思いで飾られたことをうれしく思っています。 みなさんは、小学校高学年からの規制された生活を経て、我慢することが当たり前のように過ごさなければならなかった日々や友との突然の別れを経験し、人との絆を大切に、他の人を思いやったり、違う考えも尊重できたりする人間関係を作り上げてきました。 創立三十周年を記念しスタートしたSNGs(持続可能な能生中の目標)活動の策定を知らない皆さんにとって、その具現化に向かう取り組みは並大抵ではなかったと思います。先輩たちとの二年間を礎に思いを受け継ぐ事の難しさに打ちのめされたことも多くあったと思います。しかし、その困難にも負けず、後輩たちの道しるべとなる〈活動の見える化〉に努め、背中で語ってきた『先手挨拶』、『心地よい反応』、『満点学習』、『感謝の連鎖』、『地域に貢献』の教え。みなさんの達成度の高かったアンケートの結果や目標を意識した取り組みに誇りをもって手を挙げてくれる姿は私たち教職員に勇気を与えてくれました。みなさんが仲間と考え、創り上げてきた経験は、自分で選択していくこれからの人生の中でも、皆さんを助けてくれることでしょう。 今年度『挑躍』をスローガンに掲げ、新たな挑戦を繰り広げてきた生徒会活動の原動力として活躍しました。「新たな道に正解はない」を合言葉に、変化することを恐れず、取組に思いを寄り添わせて、主体的に取り組んできました。正に、私たちが目指してきた『現状維持は退歩なり』の教えを力強くリードする姿そのものでした。その思いが体育祭や音楽祭の二大行事の大成功や日常活動の充実へと繋がっていきました。「公開熱盛ラジオ」や「じゃん拳(こぶし)大会」「被災地を助ける募金活動」等の主体的な活動の見える化は、意義を考えたり、皆で心を寄り添わせたりする中で、スローガンの実現に近づく大きな一歩となりました。 また、SDGs活動の一環で取り組んできた花いっぱい運動とコットンプロジェクトを一体化させた『感謝のフラワーロード』活動は、地域の方々の能生中に向けていただく応援や協力に応えるものです。色鮮やかな花々が咲き誇り、感謝の気持ちが伝わる春の訪れが待ち遠しいです。駅前挨拶運動や花街プロジェクト、マリンフレンズプロジェクト等の生徒が主体的に地域に働きかける活動を継続的に進めてきたおかげで、三年生が行う全国学力、学習状況調査では、自己有用感が高く、地域貢献活動に積極的に取り組んでいると高く評価され、文部科学省から全国を代表してヒヤリング調査を受けるなど輝かしい成果を上げました。 先日目にしたテレビに、「はい よろこんで」の楽曲でレコード大賞最優秀新人賞や紅白歌合戦にも出場される大人気のアーティスト「こっちのけんと」さんの生き方を特集した内容がありました。人は、絶頂期にある時、その地位を守るために無理してでも仕事を増やしたり、新たな活動領域に挑戦したりしていきます。しかし、けんとさんは、自分自身をしっかりと見つめ、自分の病から目を背けずに仕事を休むことを選びました。自分の病気を公表することで周りに自分を知ってもらい、理解してもらうために隠さずに伝えることは勇気が必要だったと思います。しかし、伝えたことで、自分は一人ではないということ、周りに支えられているということを実感したということでした。自分を一番大事にする選択ができるということは、周りの人たちも大切にできるということなのです。どうか、皆さんも自分を大切するという選択ができる、人を信頼し、頼れる人でいてほしいと思いました。 これから歩んでいく人生、その時々に周りを見渡してください。大きな愛で包み込み助けてくれる人、相談に乗ってくれる人が必ずそばにいます。それは、親であり、家族であり、仲間であり、そして、皆さんを応援してくれる多くの人たちです。どうか安心して自分の力を試してください。そして、夢や希望という美しい大きな花を咲かせるのです。 皆さんがこの能生中学校で過ごした三年間、仲間と共に培った知識や経験を生かして、自分が選択した人生を歩んでいってください。この知識や経験は、皆さんの夢の実現の大切な手立てとなることでしょう。この素晴らしき瞬間を忘れずに前に進んでいってください。 能生中学校の活動は、地域の方々に支えられて成り立っています。これからは、地域の先輩として、能生中学校の仲間たちを導いていってください。そして、皆さんが思いを託し、進化し続ける能生中学校の姿を見に来てください。来年度以降、体育祭や音楽祭には、同窓生として、地域住民として元気な姿を見せてください。夢の実現の途中、成長し続ける皆さんに会えることを楽しみにしています。 保護者の皆様、皆様のお子さんたちは、私たちの宝物であり、能生の、糸魚川の希望です。これまでの皆様の愛情と支援の賜です。これからも限りない愛情で卒業生の皆さんを応援してください。この素晴らしい佳き日を皆様と一緒にお祝いできますことを感謝申し上げます。 結びに、今日をもって九年間の義務教育を終え、希望に満ち溢れる世界へと歩みだす五十九名の卒業生の皆さんの輝かしい前途に幸多きことをお祈りし、式辞といたします。
令和七年 三月 三日 糸魚川市立能生中学校長 吉田 和則
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